南ア北部 北岳(3193m)、中白根山(3055m)、間ノ岳(3190m)、西農鳥岳(3051m)、農鳥岳(3025.9m)、 2015年7月11〜13日  カウント:画像読み出し不能

所要時間
7/11 6:30 広河原−−6:34 広河原山荘 6:48−−7:07 御池方面分岐−−8:28 御池小屋(休憩) 8:40−−9:44 森林限界(休憩) 10:07−−10:24 小太郎尾根分岐−−11:01 北岳肩の小屋(幕営)

7/12 4:11 北岳肩の小屋−−4:42 北岳 5:19−−6:00 北岳山荘−−6:36 中白根山−−7:29 間ノ岳(休憩) 8:01−−8:40 農鳥小屋−−9:26 西農鳥岳(休憩) 9:51−−10:17 農鳥岳(休憩) 10:35−−11:01 大門沢下降点−−11:53 水場(休憩) 12:03−−12:36 大門沢小屋(幕営)

7/13 4:05 大門沢小屋−−5:21 取水堰−−5:31 工事現場−−6:10 開運随道−−6:26 奈良田第二駐車場−−6:36 奈良田第一駐車場

場所山梨県南アルプス市/南巨摩郡早川町
静岡県静岡市
年月日2015年7月11〜13日
天候晴れ
山行種類一般登山 2泊3日幕営
交通手段マイカー+バス
駐車場奈良田に第一/第二駐車場あり。第二の方がずっと広いがバスに座りたければ第一駐車場のバス停を利用すべし
登山道の有無あり
籔の有無無し
危険個所の有無無し
山頂の展望どこも大展望
GPSトラックログ
(GPX形式)
無し
コメント奈良田からバスで広河原に入り、白峰三山を縦走して奈良田に下った。まだ梅雨明け前だったか好天に恵まれた。北岳肩の小屋の水場は大きな雪渓が残って水量豊富だったが、大門沢沿いの登山道も支流の水量が多く渡渉が面倒な沢もあった。高山植物は満開ちょっと前だった。肩の小屋ではNHKの撮影班に遭遇した


地図クリックで等倍表示


奈良田第一駐車場 たぶん笹山東尾根に向かう登山者
広河原へ 広河原。かなり人が多い
快晴! 吊橋
広河原山荘 登山者の列に混じって登る
御池小屋への尾根を登る 所々にベントあり
大樺沢の残雪は少ない きつい尾根が終わりトラバースへ
ガレの横断 沢を横断
白根御池小屋 天気が良すぎて日向は暑い
御池。今年は雪は皆無 クソ暑い東向きの草地を登る
大樺沢。たぶん今は雪の上を歩かない 森林限界ぎりぎり
森林限界を超えるとお花畑 大樺沢からの登山道に合流
小太郎山分岐から見た北側の展望(クリックで拡大)
小太郎山分岐から見た北ア(クリックで拡大)
肩の小屋へ向かう 快晴だが雷鳥登場
まだ北アが見えたまま
北岳肩の小屋。本日の幕営場所 稜線東側の幕営地
肩の小屋から見た中央アルプス
テント場斜面の残雪 水場へ下る
今年は雪が残っている 水場は雪渓末端。水量豊富
テントに戻るが暑い! 肩の小屋から見た木曾御嶽
NHK撮影隊 この夏初めての好天週末で稜線上にもテント
この左側に私のテントあり 平らな所はみんなテントが占拠
午後のテント場。ガスが上がってこず暑いまま
やっと日が傾いてきた
翌朝、日の出前に出発 北岳到着直前に日の出
北岳山頂 富士山
北岳から見た360度パノラマ展望(クリックで拡大)
北岳から見た奥日光
北岳から見た中央アルプス
北岳から見た乗鞍岳〜穂高岳
北岳から見た穂高〜大天井岳
北岳から見た立山、劒岳
北岳から見た後立山
北岳から見た農鳥岳付近
北岳から見た本谷山〜二児山
北岳山荘へ向かう チョウノスケ草
北岳山荘
中白根山の360度パノラマ展望(クリックで拡大)
間ノ岳へ向かう 間ノ岳への登り
奥のピークが間ノ岳 間ノ岳山頂
間ノ岳から見た北側の展望
間ノ岳から見た南側の展望
間ノ岳から見た塩見岳〜二児山
間ノ岳から見た北ア(クリックで拡大)
間ノ岳を出発 間ノ岳の下り
今日も雷鳥登場 農鳥小屋
西農鳥岳への厳しい登り 熊ノ平。約1ヵ月後に行くことになる
西農鳥岳へ最後の登り
南ア南嶺
西農鳥岳標識峰 地形図の西農鳥岳から見た標識峰
地形図の西農鳥岳から見た360度パノラマ展望(クリックで拡大)
農鳥岳山頂 農鳥岳から見た南側
農鳥岳から見た南〜西〜北の展望
大門沢下降点へ向かう 大唐松尾根
大門沢下降点 大門沢へ下る
2640m付近の平坦地 2640m付近平坦地の標識
眼下に沢 沢に下って水浴び。一か所だけ降りられる個所あり
橋が折れている 大門沢小屋
草ぼうぼうのテント場 草刈り完了
小屋の裏の沢で水浴び 日の出前に出発
何度か沢を渡る 橋の無い沢を渡渉
発電用取水堰 取水堰近くの管理小屋
取水堰先でう回路突入 う回路は登り
旧登山道は林道造成で通行不能 沢に下る
巨大堰堤下流側 工事現場休憩所
工事現場休憩所のトイレは使用OK 工事現場う回路入口
林道途中の沢で水浴び 林道横の山の神?
ゲート 開運隧道
奈良田第二駐車場 奈良田第一駐車場


 しばらく仕事が忙しくてロクな山に行けなかったが、やっと仕事上の1山を越えて週末に休めることになり月曜日に代休も取れることが確定。しかも今週末の天気予報は土日ともいい。3日使える山、しかも下界は猛暑日の予報だから3000mの世界でないと涼しくない。というわけでここ数年恒例の白峰三山縦走とした。今回は久しぶりの本格的な山歩きで体力的な不安があるので南嶺まで足を伸ばさずに大門沢下降点から奈良田に下ることにして労力削減とした。

 金曜夜のまだ早い時刻の奈良田第1駐車場はまだ空きがあり無事に確保。今年は芦安側の林道が通行可能で甲府駅発のバスはあっちを通過するので奈良田が始発となり、奈良田BSから乗ればほぼ確実に座れるのだった。ちなみに第2駐車場のバス停は「丸山林道入口」だった。こちらを始発とするバスもあるが駐車台数が多いのに始発のバスは1台だけで座れる確率は格段に落ちる。現に当日朝に第2駐車場から第一駐車場まで歩いてきた登山者もいた。事情通だな。

 夜は満天の星空で朝は雲一つ無い快晴。始発は5時半だが、軽く飯を食って1時間前にバス停に並んだらトップだった。1人の登山者がバス停を通り過ぎて下流へ向かったが笹山往復らしい。ご苦労様。最終的には始発バスでも座りきれない人数だったので、30分くらい前には列に加わった方がいいだろう。昔は芦安のバスは全員が座れるまで増発したのだが、今はそんなことはしないようで広河原に到着した芦安発のバスも寿司詰状態だった。途中、釣り客が数個所で降りた。

 久しぶりの広河原は涼しかった。トイレは空いている広河原山荘で済ませることにしてすぐに歩き出して吊橋を渡る。台風が南にいる影響で気圧配置はあまりいいとはいえず、湿った南風が入って稜線は強風とガスかもしれないと予想していたが、予想はいい方に外れて稜線までくっきりと晴れていた。暑そうだなぁ。

 広河原山荘でトイレを済ませて朝飯を食って出発。今回のルートは初日は白根御池小屋経由で肩の小屋を目指すことにした。これは北岳山頂は展望が期待できる早朝に立ちたかったからと、朝の涼しい時間帯に御池小屋まで一気に標高を上げて気温が上がる前に涼しい高さに上がりたかったこと、御池小屋まで樹林帯なので日陰で涼しいことも理由だ。

 御池小屋分岐では多数の人が大樺沢方面へと向かい、急な尾根に取り付いたのは少人数。しかしこちらの登山者はみな健脚のようで私の足でも追いつけない人が多い。それどころか追い越されることも。ここを登りに使うのは初心者ではないらいい。急な登りの連続だが日差しはシラビソの遮られ大いに助かった。それでも今シーズン初めて扇が大活躍した。

 標高2200mでトラバースに変わり、ここから小屋までは横移動が続く。小沢を横断する個所もあるので給水可能。深い樹林の斜面から開けた広い平坦地に出れば白根御池小屋到着。本日はじめての休憩。木陰に入れば十分に涼しい。ここから先は肩の小屋まで水場は無いので500ccほど水を補給。

 あまり疲労感は無いし、最後に日陰が得られる森林限界ギリギリでもう一度休憩する予定なので早めの出発。聴覚障害者らしい若者パーティーを追い越して急な草すべりを登り始める。一昨年の同時期はここには雪渓が残り御池は半分雪に埋まっていたが、今年は雪は全く見られない。おまけに草すべりは樹林が開けた場所で日陰がないのと、風向きは南西なので稜線に邪魔されて直接当たらないので暑い! 扇全開で強制風冷でも間に合わず汗が噴出す。この登りではそれまで私と同じペースで登ってきた登山者が続々と脱落しだした。確かにここはきつい。高山植物の開花は進んでおり、私の判別できる範囲ではハクサンフウロやシナノキンバイがあった。ここまで来ると下山する人の姿も見られるようになる。

 標高約2700mで森林限界に変わるが、その直下の最後の樹林帯で日陰で休憩。これより上部はもう木陰は無く、このまま歩きつづけて肩の小屋に到着してもテント場はカンカン照りで暑くて夕方までテントに入れないのは確実なので、少しばかり到着を遅らせた方がいい。靴下がずれて踵が擦れてまめができそうになっていたのでテーピングを貼って保護。以降は痛みは消えた。

 休憩を終えて出発。すぐに森林限界を突破して、鹿の食害防止柵に囲まれたお花畑が登場。今の主役は黄色のシナノキンバイ。近くには登山道を横切るように鹿道があったので、鹿が出るのは確かなようだ。そこからすぐに右俣から登ってくる登山道が合流。そちらから上がってくる登山者、そして右俣へ下る登山者が圧倒的に多いようだ。この先は登山者の姿が一気に増えるし、空も一気に広くなる。今日は文句無しの快晴だ。

 小太郎尾根に乗ると北〜西の展望が開ける。もう午前10時過ぎだがまだ空気の透明度は高く、北アルプスは槍穂はもちろん後立山、そして立山剱まではっきりと見えた。中央アルプスも南から北まで全部見えたし、その裏側の木曾御嶽も見えた。今日は素晴らしい展望だ。

 ここから肩の小屋までは楽しい稜線歩き。日差しは強いが心地いい風が吹き抜けるので体感的な暑さは無い。こんな場面ではつばの広い麦藁帽子が威力を発揮する。今の時期は太陽はほぼ真上から照り付けるので上半身の大部分が帽子の影に入る。

 小屋までもう少しの地点で斜面にカメラを向けた複数の登山者を発見。こういう場面はたいていの場合は雷鳥のお出ましだが今回もそのパターンだった。やや離れた場所にいたが望遠でばっちり。まだ小さな子供は4羽くらいいた。かなりバラバラに行動していたので子供の正確な数はわからなかった。これだけピーカンで雷鳥を見るのも珍しい。

 標高3000mの肩の小屋に到着。標高2000m越は今年2回目、3000mは今年初。テント場はまだ数張しかなく場所は選びたい放題。一人用テントにちょうどいい広さの北の端に陣取ってから幕営手続き。確か\600/1人だったような。この日は稜線東側のテント場はいっぱいになって稜線直上のスペースにもテントが立ったが、今年は珍しく明け方でも西寄りの風が吹かなかったので、尾根上でも快適に過ごせただろう。午後にはテレビカメラやでかいマイクを背負った軍団が登場。NHKの撮影隊だった。小屋に泊まるのかと思いきや、珍しく幕営。私のテントとは離れた場所であった。

 夕方に少しガスが出たが夜は快晴。満天の星空だった。今回は2つ持っていったガスライター(電子式)がどちらも着火せず、ガスに点火するのに苦労した。高度が上がるとガスライターは着火しにくくなるが、何度かやれば(10回くらい?)着火するのだが、今回は指が疲れるほど繰り返しても着火しなかった。仕方がないのでライターの火花でガスコンロに点火しようとしたが、ライターの周囲を覆う金属カバーが着火の邪魔になるようで失敗。しょうがないので1台のライターをバラして金属カバーを取り外して着火に成功。カバーを外したらライター単体でも数回に1回は火が付くようになった。隙間のあるカバーでも空気の薄い高山では酸素供給の邪魔になるようだ。マッチの方が使いやすいかもしれない。

 風も穏やかで静かな夜だったが、下界の暑さに慣れた体には4℃の気温は寒かった。今回はエアマットではなく銀マットだったが地面の冷えはあまり感じなかったが、夏用ダウンシュラフ+ダウンジャケットでも少しばかり寒かった。おかげで熟睡できず、北岳山頂で日の出を迎えるべく3時前にアラームを仕掛けておいたのだが、二度寝してしまい目が覚めたら3時20分。山頂まで30分かかるので山頂で日の出を見るためには4時過ぎに出発する必要がある。私の場合、幕営では起床から朝飯、テントを撤収して出発するまで1時間強かかるのが普通で今回は日の出に間に合いそうになかったが、火力を強めて急いで調理、急いで食ってテントを畳んだら4時過ぎ。日の出に間に合うか本当にぎりぎりの時間に出発となった。尾根上にはライトの明かりが見えて、山頂でご来光を迎えようとする登山者が先行していた。あの連中は間違いなく山頂で日の出を見られるだろう。

 私は北岳山頂で何度も日の出を見ているので今回は逃してもまあいいので、特に急ぐこともなくいつものペースで歩く。今年は朝も微風で最初から半袖班ズボンのまま歩くことができたので途中で着替えをする手間が掛からなかった。ライトを使ったのは最初の10分程度ですぐに明るくなってきた。今日も申し分ない空気の透明度で、立山剱はもちろん、妙高火打、そして奥日光と尾瀬も見ることができた。奥日光が見えたのは2回目、尾瀬は多分初めてだ。谷川岳付近も見えたがどこのピークなのか同定は難しかった。

 奥秩父の山並みの向こう側から太陽が出た瞬間、山頂の一角に到着した。まさか日の出に間に合うとは思わなかった。山頂の登山者は20人弱。立派なカメラを構えた人も多いが、時代を反映してスマホユーザーも多い。

 体を動かしている間は薄着でちょうど良かったが、止まるとこのままの格好では寒いので、一度登山靴を脱いでジャージの長ズボンを履いて、上は長袖シャツに藪漕ぎで一部かぎ裂きができたぼろいダウンジャケットを羽織る。山頂からの展望は申し分なし。昨日は噴煙がまっすぐ立ち上っていた木曾御嶽は今日は煙が全く見えないので、風で拡散しているようだ。剣ヶ峰周辺だけは変色して緑色が無く、火山灰に覆われていることが分かる。今朝のラジオのニュースでは梅雨明け後の捜索再開のための先遣隊が今朝、王滝口から山頂に入ったとのこと。まさに今登っている最中だろう。南は間ノ岳が大きすぎて塩見岳、荒川東岳は見えるが赤石岳は見えなかった。私の場合はそれら3000m峰よりも伊那のマイナー2000m峰に目が行ってしまう。代表格は黒檜山。丸山尾根の丸山、小瀬戸山、風巻峠や二児山〜本谷山の尾根など、なつかしの山々だ。もう登ることはないかな。

 展望を充分楽しんでから間ノ岳へと向かう。明るくなってから出発した北岳山荘から上がってくる登山者が多い。途中でキタダケソウが咲いていないか注意しながら歩いたが、残念ながら今年は見つけることができなかった。似ている花でチョウノスケソウというのがあったが、これは花が微妙に違うし葉っぱがかなり違う。北岳のトラバースルートの方が多そうだった。

 北岳山荘で防寒装備を脱いで身軽になってから登りにかかる。テント場の残雪は昨年よりもかなり少なかった。中白根山への登りは緩やかで、広く開けた尾根歩き。今日も快晴で日差しが強いが3000mの世界なので気温は低めで少し汗をかく程度。適度な風もあって心地よかった。

 中白根山は写真撮影だけして通過、間ノ岳へと向かう。ここは間ノ岳へ登る人、下ってくる人が半々くらい。今週は普通の週末で一般的には土日の2日が休みだから今日中に下山する人が大半のはずで、私のように白峰三山を2泊で縦走する人はほとんどいないだろう。北に戻る人は広河原からお帰りで、南へ向かう人は強行スケジュールで奈良田を目指しているはずだ。ここから奈良田は最後の下りが厳しいぞ。農鳥岳から奈良田まで標高差は約2200mあり、それに加えて間ノ岳、農鳥岳の登りも加わるから足への負担は相当なものだ。しかも下界の暑さを考えると・・・。

 中白根山から間ノ岳間は登山道は尾根直上ではなくほとんど西側を巻いている。稜線に日差しが遮られる区間は涼しい! 最後のきつい登りが終われば標高3190mの間ノ岳山頂。北に見えている奥穂高岳と同じ標高だ。ここからは国内の3000m峰が聖岳以外は全て見える(聖岳は赤石岳の裏側で見えない)。北アルプスの3000m峰は槍穂間と立山、これに乗鞍岳、木曾御嶽と続いて南アの3000m峰、そして富士山。贅沢な光景だ。

 しばし休憩してから出発。農鳥へ向かう登山道からは登山者数がぐっと少なくなった。石が積み重なった斜面の登山道を歩いている人は数えるほど。しかも間隔が空いている。肩から一気に高度を下げていくと登山道のすぐ近くに雷鳥を発見! 昨日に続いてお目にかかれるとはうれしい。今回は雛の姿は無く単独。人馴れしているようでなかなか逃げず、登山道の方に移動し始めたので私がゆっくりと動いて登山道から離れていただく。その間にしっかりとデジカメで撮影。昨日よりもずっと近かった。

 農鳥小屋のオヤジは外に出て暇そうだった。相変わらず無愛想でこちらが挨拶しても返事はなかった。間ノ岳山頂で休憩しているのでここで休憩する計画も合理性もないので通過、西農鳥への急な登りに差しかかった。ここは毎回きつい登りだ。少し風が抜けるだけマシだが無風だったら汗だくになってしまう。今日は大門沢小屋までの計画なのでのんびり歩いて問題無しなので、足は止めないまでもゆっくりと歩きつづける。途中男女のペアに追い越されたが全く追いつけない速さだった。足元を見るとトレラン用の靴だが背負っているザックは小屋泊まりくらいの大きさ。そういえば今回はトレランナーの姿が結構見られた。

 ようやく西農鳥岳の肩に到着、尾根を東へ直角に曲がる。肩で休憩の男性が一人、山頂標識の立つ西農鳥岳ではないところが玄人っぽい。山頂標識が立つピークは地形図の3051m標高点峰の一つ西側のピークなのであった。まあ、どちらのピークも目に見える高さの差は判別できないので拘る必要はないが、読図力を頼りにする藪屋としては拘りたいところ。地形図上の西農鳥岳で休憩。ここは岩のピークで展望良好。早いが昼飯を食う。

 しばし休憩してから東農鳥岳へ出発。ここから山頂までは鞍部を除いて稜線の西側を巻き続ける。でも西寄りの風が吹き抜けて快適な歩きだった。

 東農鳥岳山頂に到着。北岳、間ノ岳と比較すれば人は格段に少ない。明日は平日の月曜日なので、ここにいる多くの人はこれから奈良田へ下山だろう。標高差は約2200mあるので1日で下るのは大変だ。しかも今日のように天気が良くて下界は猛暑日の日中に下るのは灼熱地獄に違いない。それもあって私は大門沢でのんびり幕営して、明日早朝の涼しい時間帯に下界を目指す計画としている。さきほど休んだので東農鳥岳では短時間の休憩で出発。

 ここから大門沢下降点まで主に稜線東側を巻くので西寄りの風が遮られて熱いかと思いきや、今回は南西の風のようで南から風が入って去年より涼しく歩くことができた。去年は白根南嶺を縦走したが、今年はのんびり重視で大門沢へ下山。下降点では休憩する登山者の姿が目立った。

 ここより先は南西の風が遮られて無風地帯に入るし、標高が落ちてくるのでどんどん暑くなってくる。濡れタオルと扇の出番だ。樹林帯に突入すると日光が遮られて涼しくなるが、その分高度は落ちて気温が上がって発汗状況は変わらず。途中で顔、首、腕、足、そして胸の汗を何度も拭う。これだけでも体感的な涼しさは倍増する。たぶん汗に含まれる塩分のべとつきが暑さを感じさせるのだろう。

 左手に沢が出てくると樹林が少し開けて日が差し込む。沢の右岸沿いを下っていくが沢へは段差があって簡単には下れない地形が続く。2年前の経験で小屋までの間で水浴び可能な場所はこの付近のみで、この近くで安全に沢に下りられる数少ない場所がある。段差が小さくなってちょっとだけ草藪を横断すれば河原へ出られる場所で河原に下って汗臭くなった濡れタオルを沢水で洗って全身を拭う。気持ちいい! 生き返る。すぐ上に雪渓が残り冷たい水だ。途中で追い越した若者2人組も私の水浴び姿を見て河原に降り立ち水浴び。ここは適度な位置にあって休憩にちょうどいい。特に小屋に宿泊せず奈良田まで下る場合には利用価値が高いだろう。

 お先に失礼して下山続行。そうしたら少し下った場所で枝沢に水が流れていた。あれ? 2年前は涸れていたのだが。その次の沢はさらに水量があって休憩に適当な場所だった。今年の水量が多いのか2年前が少ないのかわからないが、これだけ流れていれば休憩個所に困らずに便利だ。しかしこれは梅雨明け前だからのようで、お盆に歩いたら最後の沢を除いて全て水は涸れていた。

 シラビソ樹林の傾斜が緩まると樹林の中に赤い屋根が登場。大門沢小屋だ。幕営手続きをして小屋南側のテント場に入ったが、まだ梅雨明けしておらず夏山シーズン前でテント場の草刈がされていなかった。手前の開けた場所は草がないが直射日光がカンカン照りでとても張れたものではなく、木陰になった区画の草を手袋をしてカッターで刈ってテントを張った。草が多い場所は蚊がいたようで2箇所ほど刺されてしまった。先に河原で水浴びして虫避けスプレーをかけておけばよかった。というか、沢沿いのテント場にしておけばよかった。

 テントを張ってから小屋北側の河原で2度目の水浴び。ここまで下ると水はそれほど冷たくはないが長時間足を入れていられない程度に冷えていた。肌が露出した部分に虫除けを塗ってテント場へ戻って昼寝。ここの標高は1800m弱で日陰でも風通しがないテントの中は少し暑かった。本日の幕営者は私の他に2人だけ。これが海の日の3連休ならずっと混雑するのだが。2年前はテント場はほぼいっぱいだったな。この日もにわか雨が降ることはなく静かな夜だった。

 翌朝、気温が上がる前に下山すべく3時前に起床。テント内でガスを使って飯を作ると温度が上がって暑いくらい。さすがに高度が下がっている。4時前にテントを畳み終えて出発。まだ真っ暗だがここは歩いたことがあるのでライトの光でも問題無し。河原の中を歩く区間は道が分かりにくいが藪屋の目線では判別は容易だ。ただし河原から高巻き道に乗り移ったり対岸に移る場所だけは注意しないと見落として直進してしまう可能性がある。橋は太い丸太を2本並べたもので頑丈そうだったが沢が増水したら流されそうな設置方法だった。手作りだと仕方ないことだろう。そんな橋をいくつか渡った。

 沢沿いの登山道は本流から枝分かれした細い流れが涸れた河原のような場所を利用する区間もあるが、2年前は乾いていた道が水が流れている状態。通常の登山靴なら浸水することはない水深だがトレランシューズだとびしょ濡れになるだろう。これが通常の状態なのか、それとも2年前は水が少なかったのか? 正解は今の水量が多い。お盆には水は無かった。

 どんどん高度を下げて背の高い落葉樹林帯でやっとライトが不要な明るさになった。樹林帯で暗いこともあったが今日は上空の雲が多くて明るくなるのが遅れたようだ。ジグザグを切って急斜面を下ると発電用取水堰は近い。少し傾いた吊橋を渡れば取水施設で建物の横にトイレがあるが施錠されていた。

 以前はこの先は沢に沿って下った記憶があるが、現在は林道工事中で通行止め。迂回路ありとの看板が出ていて左の斜面を登らされた。私は今朝大門沢小屋を出発してまだ体力的に余裕があるのでいいが、昨日北岳山荘から一気に奈良田まで下った連中はこの上り返しはきつかっただろう。小尾根を越えて急斜面にジグザグに新設された登山道を下ると、林道造成に伴って斜面を削っている工事現場が出現、旧登山道の桟橋は捻じ曲がって傾いていた。これじゃ通行不能だ。工事が終わったら林道が登山道になるのかな。

 2年前は工事中だった右岸の巨大護岸は今回は通らずに河原に下りて仮の橋で右岸へ。あとは工事用道路沿いの歩道を歩いて堰堤で道路と分かれて新設登山道から吊橋へ。ここは2年前と変わらずだった。そして少し進めば林道に合流。あとは車道歩きが続く。もうすぐ発電所というところの沢で最後の水浴び。これで車に到着した後は軽く体を拭くだけで済むだろう。この時間ではどこの温泉もまだ営業前だ。

 開運随道には朝から監視員が詰めていた。今日は平日なので始発バスは8:00。まだバスが来る前だ。挨拶して通過、まだ朝日は山の陰で日差しが無く涼しく歩けて助かる。振り返ると雲は多いながら今日も稜線はガスは掛かっていないようだ。

 平日なので第2駐車場の車の数は少なかった。バス停に並んだ登山者の姿もない。第1駐車場も似たような光景で、1台だけ出発準備している登山者の姿があっただけ。これから入山だと台風の影響を受けるかな。

 テントを虫干ししながら着替えたりザックの荷物整理。次に山に入るときもテントを背負うことになるか、それとも日帰りか。それは梅雨明けするかどうかにかかってくるだろう。梅雨明けしてくれるといいのだが。

 帰りは上野原まで一般道を走って節約し、中央道調布付近の渋滞が解消する頃を見計らって中央道に乗って帰った。

 

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